建設業の労災保険の仕組み
建設業界では、一般的な労災保険とは異なります。
建設工事の元請業者が加入する労災保険により、元請業者・下請業者の労働者の労働災害においても保証します。
また、建設業の労災保険料は元請工事額をもとに計算するのも特徴になります。
建設業の労災請求の仕組み
本来の労災保険は自社で雇用している労働者の災害・通勤時の災害に事業主が証明し、被災労働者が請求して補償してもらいます。
建設業の場合、現場の災害において工事の元請事業主が元請の労働者だけでなく下請・孫請事業所の労働者も請求書に証明することになります。
また、下請事業所の労働者が災害に遭い、休業補償請求書を作成する場合は被災労働者と下請事業所で確認してからの提出になります。
例外で休業時に提出する「死傷病報告書」は下請事業所が作成し提出になります。
建設業の労働保険料の計算方法
こちらも一般の労災保険料の計算方法は異なります。
建設業での労災は、元請工事の工事代金を基に労働保険料を計算する事になります。
【計算方法】 ~ 元請工事代金x労務比率x労災保険料率 ~
注意点として、下請・孫請の事業主は労災保険は適用されません。
元請工事の現場で下請の事業主が被災しても、元請工事の労災で労災保険の給付は受けられないことを気をつけておいてください。
この場合、必ず「労災の特別加入」をしてください。
労災の特別加入の仕組み
特別加入が可能な中小企業の事業主の範囲について説明します。
① 金融・保険・不動産・小売業の業種 →50人以下
② 卸売業・サービス業(宿泊業・福祉施設・美容業など)の業種の場合 →100人以下
③ その他の業種(製造・建設。運送業など) →300人以下
特別加入できる人の範囲について説明します。
① 労働保険事務組合に労働保険事務の委託をする個人事業主
② ①の事業主が行う事業に従事する同居の家族
③ 労働保険事務組合に労働保険事務の委託をする法人の代表者
④ ③の法人の取締役で業務執行権がある者
*家族従事者・役職において「事業に従事している者は全員包括して加入しなければなりません」
ただし、「理由書」を提出することにより加入しなくても良い特例があります。
① 病気治療中
② 高齢
③ 事業主本来の業務のみ行い、労働者として働かない
労災保険の手続き
建設工事の元請業者は、工事が開始された日から10日以内に保険関係成立届を必ず提出してください。
~労災保険関係成立票の提示内容~
・保険関係成立年月日
・労働保険番号
・事業の期間
・事業主の氏名
・注文者の氏名
・事業主代理店の氏名
その他、建設業の許可票・建築基準法による確認済も提示義務があります。
労災保険の継続事業と有期事業
継続事業 → 事業終了の期間が予定されていないもの
有期事業 → 終了が予定されているもの
一般の事業の場合、倒産や廃業にならない限り継続事業になります。
しかし、建設業の場合は工期があるために終了の期間が予定されていますので有期事業にに該当します。
*有期事業は工事現場の所在地を管轄する労働基準監督署で手続きしてください。
労災保険の単独有期事業と一括有期事業
単独有期事業 → 一括有期事業に該当しない有期事業を指し、工事ごとに労働監督署にて成立させ、保険料の精算を行います。
一括有期事業 → 有期事業のうち保険料の概算見込み160万円(確定保険料100万円)未満、かつ請負金額1億9千万円未満のものになります。
それらの工事を取りまとめ、1つの保険関係で処理する方法
① それぞれの事業が労災保険に係る保険関係が成立している事業のうち、土木・建築その他の工作物の建設・改造・保存・修理・変更・破壊、解体のその準備の事業であること
② それぞれの事業が事業の種類を同じくする事
③ それぞれの事業に係る労働保険料の納付の義務が一の事務所で取り扱われること
④ 厚生労働大臣が指定する種類の事業以外の事業にあっては、それぞれの事業が③の事務所の所在地を管轄する都道府県労働局の管轄区域または隣接する都道府県労働局の管轄区域(厚生労働大臣が指定する都道府県労働局の管轄区域を含む)内で行われること
労災保険の一元適用事業と二次元適用事業
労災保険の種類として、雇用保険と労災保険があります。
これら2つを一括して加入するものを一元適用事業といいます。
個別に加入するものを二次元適用事業といいます。
建設業においては、二次元適用事業に該当します。
工事が長期間に及ぶ場合
こちらは、第一期工事・第二期工事と分割発注されることが多いです。
この場合、初めに第一期工事分だけの労災保険の加入手続きを行い、第二期工事の発注が確定し、工期など変更になった場合には労働保険・名称・所在地等変更届を労働基準監督署に提出します。
労災保険料が2倍に増加し、賃金総額によった場合の概算保険料の額と申告済みの概算保険料との差額が13万円以上になった場合、その日から30日以内に増加概算保険料申告書と請負金額内訳書(乙)を提出します。
また、工事が追加発注された場合も同様になります。
そして、工事が縮小された場合については労働保険・名称・所在地等変更届を労働基準監督署に提出し、工事が終了時点で納付済みの概算保険料を精算しますが、納付した概算保険料の一部が還付されることが通常になります。
工事が終了した時の労災保険手続き
まず、労災保険の確定保険料の計算を行ってください。
そして、確定保険料と工事開始時(労災保険加入時)に納付した概算保険料との差額の精算を行ってください。
*概算保険料より確定保険料が大きければ、その差額を納付します。
*概算保険料より確定保険料が少なければ、その差額を還付請求することになります。
まとめ
・一般事業と建設業の取り扱いは異なる
・自社でやりきれない場合は労働保険事務組合に委託が可能